
私の“豚デビュー”は、塩ラーメンと餃子だった。
なぜこの組み合わせにしたのか、当時の私は記録もしていないし、記憶も曖昧だ。だが、今振り返れば、あの塩の澄んだスープの奥に、確かに“ミタス”の片鱗が見えた気がする。

つまり、これはただの“軽い入口”ではなく、**「中毒の芽」**だったわけだ。
「まずは塩から」――そう思った私は、気取った大人ぶった顔でスープをすする。
あっさりとした中にも妙な旨味。昆布でもない、鶏でもない、**何か別の“異物的うまさ”**が潜んでいた。
一口目で身体が「おや?」と反応し、二口目で舌が「ん?」と目覚め始める。
そして三口目には、脳が「もっとよこせ」と命令していた。
餃子は、しっかり焼かれていて皮が少し固め。だがその分、タレをよく吸い込み、食べるたびに“背徳感”がじんわり滲む。
子どもの舌には少し早すぎるその味が、妙に嬉しかった。

「まずは軽く…」
その判断が、のちの災いの火種になるとは知る由もない。
“軽い一杯”が、やがて私の人生を逸らせる一滴となる。
人が道を踏み外すきっかけなんて、いつだってくだらないものなのだ。
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